夜中にメールが鳴る
「寝た?」
彼はまだ、起きているんだ
2:10
「うん、起きてる。大丈夫?」
「今日はつかれた」
こんな夜中に、二人だけはつながっているんだと
思うと、妙な気分になる。
彼とは、3年前に分かれた夫だ。
「仕事きついの?」
「前と同じ」
「大丈夫?」
「大丈夫だよ、人生これからだから、頑張るぞー!!」
メールが途切れた。まただ…結局、「頑張る」で終わるメール
本当に、こんなことが言いたくてメールしてきてるの…
眠れなくなって、手にしたワイン。
ブルゴーニュの白ワイン
ベルトラン アンブルワーズ ラドワ プルミエクリュ レ グレション2006
濃い味と火打ち石のような味が口に広がる。
決して甘くはないが
骨格がしっかりしていて、シンプルでいいワインだ。
でも、ちょっと一瞬、冷たいイメージ。
一口では、誤解されてしまうようなワインだ
なんだか、彼に似てる…
もっとこのワインの味を知りたいと、
私は、グラスを回してみた
3年前、彼にこうして欲しい、ああして欲しいはたくさんあった。
でも、こうしてあげたい、ああしてあげたいと思ったことはあっただろうか?
なかった…
戻らない過去を思って、ワインと涙が混じった。
何だか優しい味になった
彼は寝たのかな?
「寝てたら、ごめんね。今度は、声、聞かせて」
携帯を片手に、私はワインを涙と一緒に飲みほした
by Premier★Bisou